5月にサミットを控え日本にも 茨城県にもテロの脅威

 ベルギーの首都ブリュッセルを322日に襲った同時テロが発生した。検察当局は25日、新たに3人を拘束したと発表した。うち1人は、ブリュッセルのスカールベーク地区で同日午後に行われた警察の特殊部隊などによる大規模な捜索で銃撃を受け捕まった。このほか捜査当局は24日夜に6人を拘束したが、この中には、22日のテロの容疑者もいる可能性がある。事態が一層複雑化する中、捜査当局は引き続き全容解明に向けた努力を続けている。

厳戒下のベルギーで起きた今回のテロは、治安機関に大きな課題を突き付けた。ブリュッセルは欧州連合(EU)が本部を構える欧州の「首都」ともいえる都市だが、イスラム過激派組織「イスラム国」に感化された若者も多い。パリ同時テロの実行犯が逮捕された直後で、警戒を続けていたはずだがテロを未然に防ぐことはできなかった。

 

標的になった空港や地下鉄の駅は、警備が必要な「重要インフラ」でありながら、不特定多数が集まる場所でもある。茨城県にも小美玉市に空港があり鹿島、日立などの港湾がある。空港では、チェックインカウンターまで誰でも立ち入ることができ、しかむ警備は手薄で、狙われる隙が無いとも限らない。5月に主要国首脳会議(伊勢志摩サミツト)、つくば市においては科学技術大臣会合の開催を控える日本は、深刻に受け止めなければならない。

これまでは遇激派のゲリラや過激な反グローバリズム団体への対策が主だったが、伊勢志摩サミットでは、イスラム国が敵と名指した国々の首脳が一堂に会する。テロリストにはPR効果を上げる格好の標的である。ベルギーのテロ事件では原発も攻撃対象だったとの情報もあった。日本は島国で、水際対策が徹底しやすいといわれるが、サミットを狙うテロリストはあらゆる方法で入国を図り、「日本であればどこでもいい」という考えで標的を選ぶ。東海村や福島原発は海に面している。

国際テロの脅威がかつてなく高まっている。全ての公共交通機関や集客施設を警察の力だけで守るのは不可能だ。全てを守ろうとすると、何も守れなくなる。こうした状況でテロを防ぐには、警察と民間企業、市民が連携する官民一体の「日本型テロ対策」を推進していくしかない。駅や空港の利用者らが危機感を共有し、不審者や不審物を目にしたらすぐ警察に通報する環境が必要だ。日本が誇る技術力を生かし、最新型の防犯カメラやドローン対策などの先端技術を活用することも一つの手だろう。

 

2020年には東京五輪・パラリンピックも控え、長期的な視点でテロ対策を進めることも必要だ。テロリストの背景には、孤独や貧困が潜んでいるケースが多い。若者が遇激思想に感化される「ホームグロウン・テロリスト」を作らない杜会政策を考えていかなければならない。

 

日本には独自の交番制度があり、警察官が地域に溶け込んで活動している。日本では「町のお巡りさん」が地域で目を光らせることが、テロの芽を摘むことにつながるだろう。